駐在員へらじかのアメリカ生活、子育て、マイルの記録

妻と2人の子供と2015-2018年にアメリカ駐在していた30代前半サラリーマンの記録。 物価が高い先進国での金銭事情、子育てと英語教育、旅行費節約のため2年で80万マイル獲得したノウハウなどを在米の皆さんに活用してもらえれば幸い。

アメリカの小児科探しや予防接種について駐在員の経験まとめ2018

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駐在員へらじか @moose_fukui です。

2015年に当時9ヶ月の娘を連れて渡米し、その後2016年に息子が生まれました。幼児2人を育てて得たアメリカの小児科や予防接種の事情について、最新情報があまりネット上にないように思えたので渡米直後の方やこれから渡米を控えている方々に向けてまとめます。昔自分が欲しかった情報を後の世代に渡すのがこのブログのモットーなので、誰かの役に立てば幸い。

極力体系的に書くつもりですが、あくまで個人の体験ベースかつ田舎町での事例なので制度の確認、通院や投薬の判断はご自身で、お願いします。

 

アメリカ特有の病院ネットワークとは

小児科の話に入る前に、背景としてアメリカ全体の病院・クリニックの構造からご説明します。

アメリカでは州や町ごとに病院ネットワークという医療機関のチェーン経営が行われています。呼び方はまちまちで、ホスピタルシステムとか、フィジシャンズグループとか、基幹となる大学病院の名前を冠していたりしますが、多数の医療機関がチェーン店のように経営されているというのがポイントです。

イメージとしては、セブン&アイがヨーカドーとコンビニを運営しているようなものでしょうか。ヨーカドーが大病院、コンビニが小さなクリニックに該当し、仕入れや流通は共通の仕組みを利用することで経営を効率化していると思っていただければ。

一つの町にはたいてい大きな病院ネットワークが2-3個存在し、互いに患者を取り合いながら競合しています。

たとえばニューヨークならNorthwell HealthNewYork-Presbyterian あたりが有名ですし、

アトランタ州ジョージアなら、Georgia Alliance of Community HospitalEmory Healthcare あたりが地域の2大グループかと思われます。 

グループ化の流れはここ5年くらいでどんどん進んでおり、我が家の近所にあった小児科も2大グループの一つに吸収されて経営母体が変わりました。規模のメリットを活かして間接コストを下げながら、地域の患者の健康を支えるのが病院グループの存在意義。

グループ化が進む背景には前アメリカ大統領、オバマによる医療改革制度があります。ここでは詳細は省きますが、「オバマケア」と総称される制度改革の一環で、医療機関は特定の地域内に住む人たちのヘルスケアに責任を持つことになりました。

言い換えると、ニューヨークならニューヨーク、アトランタならアトランタの住民が健康でいられるように予防健診や地域連携を行い医療費を下げることで病院側もインセンティブを受けられるようになったため、地域内の病院が連携するようになりました。

ちょっと遠回りしましたが、患者から見た場合の病院ネットワークのメリットは大きく2点です。

1. グループ内で共通の保険が使える。

2. 診療記録が共有されているのでグループ内の病院どこでも診察が受けられる。

保険については次の項で説明しますが、皆保険制度をとっている日本と比較し、アメリカの保険は民間がその母体。持っている保険によって、かかれる病院が変わります。ニューヨークに住んでいる人なら、Northwell Healthの内科で使える保険を持っていれば、迷うことなく同グループ内の他の診療科にかかることができます

診療記録についてはグループ間の電子カルテで共有されており、例えば内科、婦人科、産科とそれぞれ違う場所にあるクリニックに行っても、紹介状も要りませんし、過去の診療記録や投薬の記録を呼び出せるので、患者も医師もいちいち説明する必要がありません。

子供の場合、夜間に急に熱を出して救急にかかっても、普段診てもらっている小児科の記録を参照できるので、アレルギーや禁忌の心配が無いのが大きなメリット。

へらじかの勤め先では代々駐在員に伝わるサバイバルメモのような文書があるのですが、こうした病院グループの仕組みができる前に作られており、当時この全容を把握するのに時間がかかりました。

一度慣れればなんてこと無いですし、意識する必要もないのですが、これから渡米される方の心配を減らすために概要から入ってみました。

 

日米保険制度比較 皆保険vs私的保険

医療保険の制度が日米で違うのは有名な話。

日本は皆保険制度、フリーアクセスが特長で、誰でもどの医療機関にでもかかることができます。(例外的に、大病院の場合は紹介状が無いと初診料が高かったりしますが)

一方アメリカは、加入している保険の種類によってかかれる医療機関が変わります。厳密には、医療費の自己負担の割合が変わります

例えばUnited Healthcare の保険に加入していたとして、A病院グループ傘下のクリニックでは10%の自己負担、Bグループ傘下では30%自己負担、ということがあり得ます。さらにCグループでは保険適用外で100%負担、なんてことも。

B・Cグループの病院に行けないこともないのですが、医療費が異常に高額なアメリカにおいて自己負担割合の多いところに好き好んで行く理由はあまりありません

駐在員の方であれば会社で保険に加入すると思います。この保険会社の名前、保険証券に書かれたプランの名前と番号を、病院の受付に電話して確認すると保険が使えるかどうかがわかります。

病気になってからこの確認をするのは大変なので、渡米後にホームドクター(かかりつけ医)を見つけるときに、保険適用の確認も済ませておくのがお勧めです。

日本の場合と同じく、年が変わると保険証も変わるので、年初は忘れずに新しい保険証を受付に持って行きましょう。

 

アメリカでの小児科の見つけ方と保険適用

駐在員の方であれば、前任者や周りの駐在員が通う小児科に行けば間違いはないはず。それができない環境の場合は上に書いたとおり、自分がすむ地域内の病院グループを探し、受付に電話し、保険が使えるかどうかを確認します。

ではその病院グループをどうやって探すのか、ですが、Web検索はやはり優秀。病院グループのサイトに行って、住所や地図検索で診療科を指定すると最寄の医療機関を教えてくれます。

平行してやり易いのが町で看板を探すこと。どの病院グループももれなく特徴的なロゴを掲げています。車で町を走っているとそのロゴが付いた病院・クリニックを見つけることができます。

ニューヨークのNorthwell Healthの場合はこんな感じ。

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Webからの拾い物ですが、病院正面の看板にロゴが付いているのがわかるでしょうか。

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家の近所で馴染みのあるロゴを見かけたら、ああ、このクリニックは保険が使えるなあと連想できます。

これらの方法で小児科=Pediatrics、や小児科医=Pediatrician、を検索すればOK。日本で言うところの診療所を「オフィス」と呼ぶことも多いので、Pediatrician's officeなんて言い方もします。

何から手をつけていいか分からない方は、自分が住む町の名前+Pediatrics でGoogle検索することから始めましょう。その後に、保険適用の可否を確認。

 

アメリカの小児科にかかるまで

日本で生まれたお子さんをアメリカに連れて行く場合、かかりつけ医を見つける必要があります。後述する予防接種も含め、定期健診や普段の病気の診療など、基本的には一人の小児科かかりつけ医がすべて対応してくれます。

我が家も上の子がお世話になったおばあちゃん先生がいましたが、年末に引退してしまい寂しい思いをしています。アメリカでお世話になった人の間違いなく3本指に入るくらい、小児科の先生には家族ともども、心身ともに支えられました。

上に書いたステップを踏んで医療機関の候補を見つけ、保険適用OKだと確認ができたら、小児科医の空きがあるかをたずねます。これは、かかりつけ医制度のために医師一人あたりが診ることができる子供の数が決まっているためです。 

ここが、前任者の言うとおりにしていればOKとは行かないポイント。数十人の枠が埋まっていると、その先生は新規に子供を受け入れることができません。これはもう運次第なので、近いところから順に電話をかけて当たっていくことをおすすめします。

我が家の場合は4件目でようやく空きがありました。最初の3件で軽くたらいまわしにされたのは良い思い出。当初電話がスラスラできるほどの英語力も無かったのでうまく取り次いでもらえず、英訳した母子手帳を片手に突撃訪問して身振り手振りを交えながら事情を説明していました。

アメリカ人からすると生まれたときからかかりつけ医がいることが当たり前なので、かかりつけ医を探していると相談した時点で相手の頭に?マークが付くこと請け合い。

日本から引っ越してきた、ホームドクターがまだ決まっていないので初回のアポを取りたい、と根気よく説明しましょう。

うまくかかりつけ医が決まっても、いざ風邪をひいたときにすぐに診てもらえないのがアメリカ式。基本的に全ての診療は予約制なので、朝熱が出たから昼に診てもらうということはできません。医療費削減のために、まずは市販薬で対処するのが一般的。その分市販薬は日本よりもラインナップが豊富です。

熱が出たらまずは市販薬を飲ませ、3日経っても下がらなかったら連れて来てねと決まり文句のように言われます。このため、熱と解熱薬をあげた日時をメモしておくと相手に伝わりやすいです。

予約さえ取れれば日本よりはるかに快適で、定刻の少し前に到着してチェックインをしておけば5分と待たずに診察に進めます。咳やくしゃみをする人の中、待合室で1時間待つ、なんてことは一度もありません。過去最長でも15分待ちくらいだったかと記憶しています。

 

市販薬の使い方

注:この項の記述は特にへらじかの体験に基づきます。参考程度に留め、投薬の際には必ず医師の判断を仰いでください。

上で書いたとおり、アメリカの市販薬は種類が豊富な上に、有効成分が日本の処方薬並みかそれ以上に含まれているのでよく効きます。効きすぎると言っても過言ではありません。

子供の発熱にはタイレノールまたはモートリンを飲ませるよう、医師からは教わりました。定期健診のたびに体重を量るので、それにあわせて医師が、タイレノールなら何cc飲ませてね、と教えてくれるので、それに従います。

小児用の解熱剤は液状で、スポイトで測れるので飲ませやすくて重宝しました。ドラッグストアだけではなく、近所のグローサリーでも10ドル以下で買えるので1本は持っておくことをお勧めします。

投与の目安となる体温は100度。日本の摂氏と異なりアメリカでは華氏を使うのが普通なので、はじめは少しとまどいます。摂氏華氏の変換はGoogleでたくさん出てくるので割愛しますが、華氏100度は摂氏で約37.8度に相当。これを超えたらタイレノールです。

このくらいの熱なら解熱剤をあげなくても、水分補給だけで良いという判断も、日本ではありえると思います。へらじかも、その考え方には同意。

ただアメリカで実際に3年近く暮らして経験したのは、タイレノールをあげないといつまで経っても診察にたどり着けないとうことでした。

1日目、37.8度で薬は飲ませずに対処。

2日目、一旦37.5度くらいまで下がる。

3日目、38.5度とまた上がったので病院に電話 → 「タイレノール飲ませて、話はそれから」

といったやりとりは何度も経験しました。

高熱とはいえない体温のときに解熱剤をあげることには是非があるかと思いますが、少なくとも、タイレノールをあげないと診察までたどり着けなかったという経験談だけ、ここでは共有させていただきます。

 

予防接種日米比較

アメリカの小児医療で一番良かったのは予防接種でした。日本の集団接種と異なり、予約をした上でかかりつけ医が対応してくれるので、風邪やインフルエンザが流行する場に連れて行かなくて良いというメリットがありました。

また、種類は忘れましたが、日本なら一部自己負担で支払いをしなくてはならないものも、アメリカでは予防医療を推進する考えから無料で受けられたりします。

初回の健診時に日本で受けた予防接種を英語化して提出。それに応じて足りない分をアメリカで摂取してくれます。1日に3本一気に打つ、という伝説じみた話を聞いたことがありましたが、本当にやります。幸いうちの子達はぐったりするものの、熱やかゆみといった副作用は大きく出ませんでした。

親の目線では、集団接種に連れて行かなくていいことと、スケジュールをがんばって組んで何度も会場に足を運ぶ必要が無い、というのがとても助かりました

摂取する種類数は、アメリカの方が多いです。一部、日本脳炎や結核など、アメリカで発症しないものについては受けられないので、帰国後に受ける必要があるのだろうと予期しています。

 

最後に 通院や投薬の要否はご自身で

ここまで、約3年間の経験をまとめてきました。医師でも薬剤師でも看護師でもない立場から医療や健診について発信することには少々のためらいもありましたが、渡米を控えてネットで欲しい情報が取れなかった過去の経験を踏まえて記事にしました。

Twitter上で記事の見出しだけの予告をしたときに良い反応をいただけたのも後押しになりました。小さいお子さん連れでの渡米や、アメリカでの出産は不安だらけだろうと思います。実際に我が家もそうでした。

なぜかネット上では駐在中の小児科情報は発言小町や知恵袋での断片的な情報しかなかったり、発症してからの対応方法しか書いていなかったりして、病院探しについての情報は少ないように感じます。今回の記事が、その一助になれば幸いです。

投薬、診療や予防接種についての記載は参考程度なので、くれぐれもご自身で判断ください

また、ブログを通じた医療相談には応じかねます。あらかじめご了承ください。

そしてお子様やご家族が健やかに過ごされ、アメリカでの生活が楽しいものになることを東海岸から、帰任間近の駐在員は願っています。 

 

子供つながりで過去記事のご紹介です。子供の学費を軸に家計をシミュレーションし、節約や運用についての方針を立てた記事はこちら。5%の節約と、利回り1%の運用は同等の効果があります。


これから渡米される方にはこちら、車の選び方について。自動車大国にして交通事故大国のアメリカでは、コンパクトカーよりもある程度ごつくて丈夫な車をお勧めします。

 

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